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『STEINS;GATE』原作&MAGES社長・志倉千代丸さんインタビュー
2011年 5月 31日(火曜日)
Xbox360版とPC版でヒットを記録した『STEINS;GATE』のファンディスク『STEINS;GATE 比翼恋理のだーりん』(Xbox360版)が6月16日に5pb.より発売!それを記念して当サイトでは『STEINS;GATE 比翼恋理のだーりん』に関わるクリエイターのインタビュー企画をお届けする。



その第一弾は『STEINS;GATE』の原作や主題歌の作詞・作曲を手掛け、制作・販売する5pb.Gamesを擁するMAGESの社長も務める志倉千代丸さん。『STEINS;GATE』が誕生したきっかけや世界観などについて、『STEINS;GATE 比翼恋理のだーりん』のセールスポイント、そして気になる科学シリーズ新作の『ロボティクス・ノーツ』や今後の野望について大いに語ってもらった。

●ファンタジー嫌いがリアリティのある科学シリーズ誕生のきっかけ

―妄想科学アドベンチャー『CHAOS;HEAD』と、想定科学アドベンチャー『STEINS;GATE』は“科学アドベンチャーシリーズ”と呼ばれていますが、科学シリーズを着想した、きっかけを教えてください。

志倉千代丸さん:実は僕、ファンタジーが嫌いなんです。ファンタジー作品にたくさん関わらせていただいてるのに(笑)。例えば20XX、○○星で起きた出来事とか言われても正直、ピンと来ない。地球と重力が違えば環境も違うし、生きている人達の考え方もまったく別で、魔法さえ使えてもおかしくないし。逆に、この現実世界の中だったら、そんなに大きな事件でなくてもインパクトもリアリティもあると思っていて。だから背景も含めたリアリティの中で事件を起こしたいというのが始まりです。
作中にリアリティのある事件を起こすにはある程度、科学的な根拠や背景がないと何でもありになっちゃうんですよね。でも、それは全然おもしろくない。映画館でスタッフロールの終わりまで席を立てなかったり、TV画面に釘付けにするような作品にするには、トンデモ世界や、何でもアリなキャラではダメなんです。現実にある街、例えば渋谷で、猟奇的な事件が連続で起こる、と言われたらその時点で嫌な予感がするしイメージや興味が湧くじゃないですか。まぁ趣味の問題ですけどね。

-それは『CHAOS;HEAD』ですね。科学アドベンチャーシリーズという流れは最初から考えられていたんでしょうか?

志倉さん:『CHAOS;HEAD』は妄想をテーマにした科学だったので、妄想科学アドベンチャーと名付けたんです。シリーズ化なんて最初は考えていませんでした。おかげさまで『カオスヘッド』がそれなりに認知して頂けたので「じゃぁ次作も妄想科学シリーズかな?」と一度は思いました。でも『CHAOS;HEAD』の制作中に『STEINS;GATE』のプロットを書いていたら、「これは妄想の世界じゃないな」と。これは検証が終わってないまでも、原理や理論は既にある想定科学じゃないかって。それで科学アドベンチャーシリーズだということになってしまって、「次の作品も○○科学なんですよね」と周りからも言われて、「まあ、そうですね」と追いつめられて(笑)。だから後付でこうなっちゃった感じです。

●『CHAOS;HEAD』の制作中に『STEINS;GATE』に着手

-『STEINS;GATE』の原作はいつ頃書かれたんでしょうか?

志倉さん:『CHAOS;HEAD』の原作を書いて、ライターの林とやり取りをしている頃には既に着手してました。今、取り掛かっている新作『ロボティクス・ノーツ』も『STEINS;GATE』のXbox360版のマスターアップで忙しい時に「お前ら、まだ『STEINS;GATE』とか言ってるの?」って。そんなことを言いながらも次作については一切、教えず。大事な時期に新作に興味が行っちゃうといけないので(笑)。だから『STEINS;GATE』の原作を書いてる時には「君達はまだ妄想の中にいてくれ」と。
-思わせぶりに振っておいて。スタッフの皆さんがかわいそうです(笑)。『STEINS;GATE』のリリース後は反響も大きかったそうですね。
志倉さん:発売前、『シュタインズゲート』は総合評価で70点位とれたら上々だろうと思ってて。ゲームの発売日から翌々日になると完全クリアした方も出てきて、そういう方から寄せられるアンケートの戻り率が異常なほど高かったんです。それで手応えを感じました。ほぼ感動するポイントも共有できたという感覚もあって、それは僕らと趣味が合う人が多いということに喜びを感じたし、「それならもっとおもしろい作品作っちゃうよ!」とモチベーションも高くなりました。次回作の時もみんなの趣味が変わってなきゃいいけど(笑)。

●『CHAOS;HEAD』も『STEINS;GATE』もギャップ萌えが人気の秘密?

-『CHAOS;HEAD』がかなりセンセーショナルでディープなストーリーだったので、『STEINS;GATE』も近いテイストになるのかなと思っていたので結構驚きました。

志倉さん:キャラクターデザインがささきむつみさんからhukeさんになっただけでも大きく変わってますよね。『CHAOS;HAED』は残酷な描写もある中で、キャラは萌え系でその振り幅がおもしろいと思っていて。僕の中の一番最初の妄想で、背景が半分崩壊した渋谷で、女子高生の制服を着た女の子達が、得体のしれないでっかい剣を持って並んでる。みんなうつむき加減なんだけど、絵は萌え系と全部がどちらかの方向に振れていて。その振り幅の高い要素が一つになったポスターイメージが浮かんで。それをラフにして実際にポスターを作って、そこにマスコミが付けた、一つひとつの事件のタイトルが並べてみたらリアリティが増してと、ポスターイメージを物語として広げていったのが『CHAOS;HEAD』です。 『STEINS;GATE』はhukeさんを起用した時点で今までのアドベンチャーゲームとはちょっと違うものにしたいと。アドベンチャーゲームのエンジンはいろいろな作品に使われてきたけど、美少女ゲームや18禁ゲームに使われがちな時代が数年続いていて。僕はそうじゃないものに使いたかったんです。

-最初に提示されるビジュアルなど、大きなインパクトと意外性に興味をひかれてしまいます。どんなゲームなのか、すごく気になってプレーするとサプライズがいっぱいで。

志倉さん:結局、振り幅に行きつくんでしょうね。『CHAOS;HEAD』も本編の他に、『らぶCHU☆CHU!』というファンディスクがありますが、あのシリアスな世界観にこの作品みたいな意外性があったし、『STEINS;GATE』でも『比翼恋理のだーりん』というファンディスクが6月16日に出ますが、そこでも主人公の岡部達が作った未来ガジェット、電話レンジ(仮)や、その後に生まれたであろう新たな発明品を使ったらどうなるだろう?と。つまりギャップ萌えなんです(笑)。

●『STEINS;GATE』の世界観にマッチするのが今の秋葉原だった

-『CHAOS;HAED』は舞台がおしゃれタウン・渋谷だったのが、『STEINS;GATE』ではおたくの街・秋葉原になって、より身近でリアリティを感じやすくなった気がします。

志倉さん:『CHAOS;HEAD』の主人公・西條拓巳君は渋谷が大嫌いで、なくなればいいと思っていたら実際そうなってしまって。『STEINS;GATE』の舞台を秋葉原にしたのは、オカリンやラボメン達が研究所を構えるとしたらどこかなと考えたらアキバしかなくて。部品の調達も楽だし、使われなくなった電子レンジとか落ちてそうとか、たぶんそんなことを彼らは考えていそうじゃないですか。

-2010年の秋葉原という、今のアキバにこだわった理由は?

志倉さん:ラジオ会館がなくなってしまうニュースなど、劇的に変わっていくアキバを記録映像的に残したいという気持ちもありました。2010年の物語を2010年にやることはリアルで楽しいし、2015年にこのゲームをプレーしても「5年前ってこうだったな」というおもしろさはあるので、時代を切り取ることにこだわった感はあります。
-街の雰囲気や建物など、驚くほど忠実に、僕らが通っているアキバなんですよね。
志倉さん:実際に僕が歩いたり、車で走って、マップを作って、Googleマップと照らし合わせて「このルートならIBN5100を運べるよな」と、移動距離なども考えながら作っていきました。オカリン達のラボの下にあるブラウン管工房も、そこしかないっていう場所なんです。あれより駅寄りにすると家賃が高くなるし、中央通り沿いでもないし。





●タイムリープ理論などの想定科学のおもしろさにプレーヤーも共感

-この作品ではタイムリープが物語のキーになっていますが、その理論的なベースは2036年の未来からやってきた人物とネット上でも話題になったジョンタイターや、2008年にCERN(欧州原子核研究機構)が行ったマイクロブラックホールの実験など現実に起こった事象が扱われていて、それがリアルさや説得力を増している気がします。

志倉さん:タイムリープは現実では成功も解明もされていないし、CERNも悪い人達じゃない。ただCERNを敵視する人も多く、たくさんの訴訟も抱えているので悪く映る可能性も否めない。科学自体が味方にもなるし、脅威にもなりうるわけです。
今、想定されている科学の中で、CERNの素粒子の実験もそうですし、作品の中で使われているリフターという原理、ブラウン管から電化させると宙に浮いてしまう無重力状態とブラックホールがもたらす超重力が相殺され、超重力に逆らえるかもしれないという理論は実証されていないけど、否定もできない。そういう想定された科学を掛け算して行くとおもしろいものができるんじゃないかと。そして、そういう下地があると『CHAOS;HEAD』の時のように、気になってネットで調べてみたら本当にあったというのと同じことができるんじゃないかと思って。
今の人達はネットにあったらリアルって感じるんですよね。嘘かもしれないのに、見つけたら「本当なんだ!」と思っちゃうんです。その嘘か本当か、わからない境界線の中に、物語のテーマになっているものを全部埋めてあって、それだけで作られているのがおもしろいと思って、ユーザーさんも同じようにおもしろいと感じてくれたのかなと。

●チュートリアルはキャラを通じてわかりやすく

-設定や用いられている理論、タイムリープが行われること自体、SF的なのに、ゲームの中で起こる事象がすごく現実的に感じられるんですよね。

志倉さん:ギリギリありえそう、みたいなことで。その意味でもよりリアリティを求めるために、タイムスリップでもなく、タイムマシンでもなく。デジタルなものはデータであり、突き詰めていけば光にもなります。例えば高速でモノを動かすと時間が止まり、光速を超えると時間が逆戻りすると言われていますがまだ実証されていないので想定された科学でしかありません。
今、高速で移動できるものは情報しかないんです。人が乗るものが光速を超えるのよりは、情報なら光速を超える可能性もあると思うんです。そこから、メールだったら過去に送れるかもしれない。しかも携帯メールって誰でも使う身近なものなのでリアリティがあるなと。CERNの行った2つの陽子を高速で加速させ、衝突させるLHC(大型ハドロン衝突型加速器)という実験で、メールのテキストデータを乗せたらどうなるんだろうと思ったんですよね。僕がCERNに頼んでやってほしいくらい。

-それが作品上で、電話レンジ(仮)で転送できる容量制限につながっているわけですね。ご説明いただくとかなり難しい理論のようですが、ゲームの中ではキャラ達の会話などでわかりやすく説明されていて、理解しやすかったです。

志倉さん:電話レンジ(仮)を操作する時、最初に“120♯”とプレーヤーに打たせるんですが、その手前でメールが届いて、プレーヤーにとってのコントローラー、携帯電話のフォーントリガーを取り出させるための第一段階のチュートリアルになってます。取り出して“120♯”と打つ時もガイダンスを出してわかりやすくして。チュートリアルと言えば、ゲーム全体がタイムリープする構造を説明するチュートリアルとも言えます。
 チュートリアルはわかりにくいと意味がないので、岡部やまゆりを聞き手役にして。岡部は中二なことは得意だけど、本当に詳しいかと言えばそうではなくて。偉そうに「それはどういう意味だ」と言うと、紅莉栖が説明してくれて。まゆりに説明する時はもっとかみくだかなくてはいけない。2つの視点の聞き手がいるのでわかりやすく、プレーヤーも飲み込みやすくなっていると思います。

●行動で物語が分岐するフォーントリガーはADVゲームの革命的なシステム

-プレーヤーの行動が選択式でなく、携帯電話に出る、出ない、メールを見る、スルーするなど、フォーントリガーシステムだったのも斬新でした。

志倉さん:選択肢はいらないなというのはオダギリジョーさんが目の前に差し出されたカードを見て「どうする、俺?」と悩むCMを見て思ったんです。人生ではあんなカードは出てこないし、気づかないうちに割とシームレスに分岐しちゃっているわけです。それをプレーヤーの行動にどう落とし込むか、考えた時、携帯電話を触る率が今はすごく高いことに気づいて。携帯電話を触って、誰かに電話したり、メールを無視したりすることで人生は分岐していて、重要な要因になっているはず。だから携帯電話の操作だけで、選択肢はいらないだろうと。
『CHAOS;HEAD』では妄想トリガーといって、ポジティブな妄想か、ネガティブな妄想かをするかで、物語が分岐していくシステムでした。プレーヤーの行動パターンの中から妄想レベルを測って、そのレベルによって物語も変わって。例えば病院でカルテを書くシーンで、見てる夢がカラーだったら妄想力が高いとか。拓巳の妄想レベルはすごく高くて、プレーヤーの妄想レベルは最初低いけど、段々、拓巳に近づいていくと。『カオスヘッド』では選択肢も若干あったので、『STEINS;GATE』ではそこはそぎ落としたくて。
このトリガーシステムは新作の『ロボティクス・ノーツ』でも採用される予定で、たぶん選択肢はないと思います。古いけど一周回って新しいということでポケコンにしようかなと。あまり話し過ぎると怒られちゃうので(笑)、詳しくは僕のTwitterを見てください。
(志倉千代丸さんのTwitter:)



 
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